元 取締役戒能 陽一(2019年7月退任)

Kainou Youichi

ING 30周年

手元の名刺こそ己の歴史

「実践の ABC」を胸に

忘れられない2つのエピソード

趣味 30年前の逸話を2つほどご紹介します。さほど営業の腕もない私ですが、売りたいという思いだけで通い続けて、最後はその会社の社長夫人から「どうせ買うなら戒能さんから買ってあげる」と言われ 大喜びしました。納品前に社長から車はいつ来るの?と言われ衝撃を受けました。顔が似ていたのかもしれないけれど、自分と同じくらい通った営業がもう1人いたのですね。システムの提案のインパクトがよほど薄かったの?うれしいような悲しい話でした。
もう1話は今治のタオル加工会社に提案見積をした際の思い出です。その会社の社長さんに赤子の手をひねられるように強烈な値引きで受注し、初導入であったため、商品登録の際にひと悶着あり「使 えるようにして納品せよ」との無理難題。5,000点もの登録を会社の皆に手伝ってもらってやっと納品できました。
しばらくしたある時に、その社長に呼び止められ一言「コンピューターのシステムのようなものは飛び込みで来た営業から買ったりはしない。1件売れたらその客に徹底的に尽くせ、そして満足してもらえたら必ず次の商売に繋がる!今後それを肝に銘じて営業して行け!」と言われました。

「策せず無心に」が結果に繋がる

その時に他の会社を紹介して頂き、その会社からも受注することができ、その後、社長の言われる通り、紹介が紹介へと繋がり、最後は10件を超える受注になりました。ちなみに、その会社はその後、見事に年商300億に成長されました。ご教授頂いたように徹底的に尽くせたかどうかはわかりませんが、お客様から教わった忘れられない一言です。
2つの話にはある1つの神髄が込められています。営業の仕事の必要項目に『熱意・情熱』というものがありますが、商品を買ってもらう前に自分を買ってもらえないと商売にはなりません。策せず無 心に訪問したことでこそ、信頼を得たわけです、失いたくない重要なものの一つです。
CSという言葉も以前ほど耳にしなくなった気がしますが、売り急がずまず1件の顧客に尽くす事はある意味すべての商いに通じるものです。

約5,000枚の名刺

大切なこと とある研修で、関係のやり取りを通帳に見立てて、そこに記されるのは信頼であり、その残高は絶えず増減し、その残高がある基準を保たなければ良い関係を築けないということを教えてもらいました。まさに神髄です。決してスマートでもなく、少し頼りないけど、いつもウチのことを考えてくれている、そんなタイプの営業のことなのかなと思います。
私の手元には約5,000枚の名刺があります。自分の名刺が捨てられるのも嫌なので、人から頂いた名刺は絶対捨てないので、同じ人の名刺もたくさんあります。実質は、今までに約3,000人との出会いがあったということになります。得意先、仕入先、関係先様々ですが、さすがにすべては無理ですが半分くらいはイメージできます。ただ、信頼口座まで開設できたのはひと握りです。
たかが名刺ですが、自分の足跡を感じられるものの1つです。今は走ってきた30年の中で自分なりに築き得てきたものを少しでも伝えていければと考えています。CSの実践ABCは、A当たり前のこと をBばかにせずCちゃんとやる…、ただそれが日常そのものなのです。